まなしばです。
前回の記事で、神奈川の武蔵小杉にある茶々むさしこすぎ保育園さんにお邪魔してきました。
今回はその続きとして、「実際に保育士という職業はどのような職業なんだろう?」「仕事内容に比べて、社会的地位が低いとされているのはなぜなんだろう?」と感じたため、許可をいただき、保育士を体験させてもらうことになりました。
というのも、世間では、待機児童問題の1つの原因として、保育士が足りない足りないと言われています。
その理由はお給料の低さ(全産業平均年収約489万円に対して保育士は約323万円*1)であったり、また職場の人間関係で悩む先生が多かったりして、長く続けにくい職業であると言われています。
実際に、潜在保育士という、保育士資格を持っていても保育園などで働いていない人の数は、厚生労働省によると2015年10月時点で約76万人と言われています*2。
そこで私は思いました。
「本当に保育士という仕事はそんなに大変なのか?」
「ぶっちゃけ仕事に見合う適正な給料はどれくらいと考えられそうか?」
2歳の子供を育てる母親として、1日ではありますが、保育士のお仕事を体験してきました。その一部始終をご覧ください。
パッと読むための見出し
今回一緒にいろいろ教えていただいた最上主任と2歳児クラス
さて、今回私は、神奈川県の武蔵小杉にある、茶々なかまち保育園(認可保育所)の2歳児の約12人のクラスに入ることになりました。
そこで一緒に主任の最上先生にも入ってもらって、いろいろと教わることになりました。保育業界ではちょっぴり珍しい、笑顔の素敵な男性の先生です。
※主任というのは、保育園では園長の次に偉い立場の人です。
まなしば
「最上主任、よろしくお願いします!」
最上主任
「よろしくお願いします!」
まなしば
「(笑顔が眩しいっっ。)たくさんの子どもたちに囲まれるのは初めてで緊張しますが、2歳児なら、奇遇にも、娘と同じ月齢のクラスです。なんとか頑張ります・・!」
最上主任
「それはよかったです。朝の9時から保育開始となるので、絵本の読み聞かせに参加したあとに、外遊びに入りましょうか。」
一斉に子ども全員を見るのが大変すぎて・・
園児1
「電車ごっこしよう〜!」
まなしば
「いいよ!ガタンゴトンガタンゴトン・・」
園児2
「ねえねえ、お団子つくったの。たべて〜!」
園児3
「これはアイスクリームだよ!はいどうぞ。」
まなしば
「あ、ちょっと待ってね、電車降りてからね・・もぐもぐ」
まなしば
「・・・えーっと、主任、目と手が全く足りません。というか、2、3人を見るので限界です。ああ、そんな上に登って・・。」
最上主任
「2歳児クラスだと園児6人に対して最低1人の保育士でみることになります。なのでこのクラスは最低2人の保育士がつくんですよね。
一緒についてきている子どもたちの他にも、他のこたちはどこにいるのか、何をしているのか見守る必要があります。」
まなしば
「ああ、すごく神経を使います。怪我をさせても大変だし・・・。」
まなしば
「普通に保育士さんすごすぎます。私なんて子ども1人でいっぱいいっぱいなのに。」
この後、水を使って泥遊びをしたり、ダンゴムシ探しをしたり、保育園で育てている豆の収穫をしたりして、気が付けばお昼の時間に。
お昼ごはん「いただきます」
まなしば
「普段はPCの前に座っているだけなので、肉体的にも疲れました(すでに)。そしてお腹が空いた・・!」
最上主任
「お昼の時間になったので、昼食の準備をします。昼食を子どもたちに配りつつ、ちゃんと座って、手をお膝に置いて、待ってもらえるよう伝えていきます。僕たちもここで一緒に昼食を食べましょう。」
▲子どもたちに給食を配膳していく。もちろんこの給食は園内の調理師さんの手作り。
まなしば
「いただきますをするまで、ちゃんと待っていられるように促すんですね。みんなきちんと手をお膝にして待っていて、偉い・・。
保育園では子どもをただ単に預かっているだけではなく、所作もしっかり身につくのですね・・!」
▲みんな揃ったところまで待ち、しっかり「いただきます!」
まなしば
「でも、2歳児とはいえ、もうみんなほとんど食事用のエプロンは布で済むんですね。うちの子だったらびちょびちょにして大変になりそうですけど・・・」
担任の先生
「2歳児でも、こぼしたらどうなるか、その後どうするかって、考えるんですよ。それに、こぼさないようにはどうしたらいいかって考えるようになります。
それもすべて練習で、やってみないとわからないので。」
まなしば
「子どもだからといって、子ども扱いしていてはだめですね。
ところで、ご飯とお味噌汁のお汁しか飲まない、みくちゃん(仮名)、野菜を食べないんですけど、どうすればいいですか。私いつも子どもには無理して食べさせてるんですけど・・。」
担任の先生
「無理して食べさせることもできるけれど、食事の時間を嫌いになってほしくないので、今は食べられるものを食べてもらっています。」
まなしば
「そうなんですね・・!野菜を食べないと大きくならないっていつも神経質になっているけれど、もうちょっとゆるく考えてもいいかもしれない・・!」
最上主任
「さて、食べ終わったところで、このあと子どもたちはお昼寝をします。少し休憩をして、他のクラスの子たちの様子も見に行きましょうか。」
まなしば
「あーっ、やっと休憩・・・まだ午前中なのに・・(すでに疲労)」
▲コーヒーをいただきました。ホッとしたのか、自分でいうのもなんですが笑顔すぎ
0歳児のお昼寝やお茶会の様子を見に行こう
最上主任
「さて、休憩をしたところで、0歳児の様子を見に行ってみましょうか。」
まなしば
「みんなお昼寝中ですね。ああ、小さい、可愛い、懐かしい・・」
最上主任
「お昼寝中とはいえ、とくに0歳児は乳幼児突然死症候群のこともあるので、きちんと仰向けに寝ているか、呼吸のチェックなどをして、常に保育士が見ています。」
まなしば
「(交代で休憩を取っているとはいえ)気を抜けなさすぎて大変。うつ伏せ寝をさせてはいけないですものね・・。
あと、休憩時間だからって、保育園を離れられないですね。サラリーマンとかだったら、近くでランチとかできるけれど、そうはいかない。なんというか大変すぎてもう・・。」
最上主任
「次はお茶会の様子を見に行きましょう。お茶会というのは、食堂のお掃除当番があって、それをやってくれた子たちと園長が、ご褒美という形でお茶を飲むんです。」
まなしば
「へぇ、楽しそう・・!さすがお茶畑からはじまった保育園ですね。」
▲お茶会の様子。園長先生とも距離が近い。
まなしば
「ただ単に楽しいだけではなく、飲み終わったら、ちゃんとお片付けもしてもらうんですね。本当保育園はしつけの場でもあるわけですね。」
保育士という職業について
まなしば
「ところで、最上主任はどうして保育士になろうと思われたんですか?」
最上主任
「“子供の前で笑顔になれる自分が好きになれそうだったから”、ですね。」
まなしば
「名言出たっっ!素敵ですね。やっぱり子どもは可愛いですしね。でも、子どもが好きなだけでは、続かない仕事とも言われますが。」
最上主任
「そうですね。だからこそ、子どものことが好きなだけではなく、そんな自分自身も胸をはって、楽しめるかどうかが大事だと感じています。」
まなしば
「それはあらゆる職業にも言えそうですね。結局自分自身が楽しめているかどうか、そしてそれがお金に変わるかどうかが、仕事をする上でも重要な気がします。」
最上主任
「それに、この保育園には海外研修があり、ドイツとデンマークの研修に参加しました。」
まなしば
「それはすごいですね!普通のサラリーマンでも、海外研修なんてそうそう行かせてもらえないですよ。」
最上主任
「保育の仕方を学んできました。英語で。すごくいい経験になりましたよ。」
まなしば
「働き方についてはどうですか?空気を読まずに聞いちゃいますが、休みはとれますか?残業代はちゃんと出ますか?
残業代とか、出ないところも多く、みんな持ち帰り仕事をしているところもあると聞きますが。」
最上主任
「休みを取ることはもちろんできますが、休むには工夫が必要ですね。残業代はもちろん出ます。
僕は主任という立場ですが、例えばパートタイムの形態であればもう少し働きやすいですし、ママの保育士もいます。」
まなしば
「でも今日1日体験させてもらって、1人でも補助の人や保育士が多ければ、すごく楽になるんだなって感じました。それでもやはり、保育士って足りないな、って感じられますか?」
最上主任
「どの保育園も人手不足だと思います。」
まなしば
「保育士になりたくてなった人たちが、ずっと続けられる仕事であってほしいですね。そういう意味で、やはり待遇の向上も含めて、社会的地位の向上を望むばかりです。」
1日体験したまなしばの感想
とにかくめちゃくちゃ疲れました。
保育士=子どもと遊んでいるだけ、のように捉えられがちですが、そもそも子どもの面倒を見るのってめちゃくちゃ大変です。
1人を見るだけでも大変なのに、複数人を一斉に、なるべく怪我もさせないようになおかつしつけや教育もして、って・・プロにしかできない、さすがの国家資格なわけです。
あと、今回は園内に園庭がありましたが、これを例えば公園で代わりに保育をするとなると、まず子どもたちを引率して車などに気をつけながら移動しなければならないうえに、公園には一般の他の人や公衆トイレだけを利用するようないろいろな人もいるわけで、そのなかで子どもたちを安全に見守りながら保育をするというのは、想像をするだけでも大変なことがわかります。
とくに都内だと、保育園を作る場所がないという土地問題も多く、園庭がないなら公園でいいじゃないか、みたいな話もありますが、そんなかんたんに済む話でもない、ということがわかってもらえるかと思います。(もちろん土地がない中で折衷案を模索していくことはとても大事ですが)
子どもを育てていて思うんですけど、子どもって、いつケガをしてもおかしくないというか、手をつないでおかないと勝手にどこかに行ってしまうし、手をつなぎたくないって言われるときもあってたいへん危険だし、もうなんか常に危機感があるというか、そんなつもりで子育てはしているところがあって。
・・・でも子どもってそんなもんですよね?
そんな子どもたちを複数人一斉に見て、安全を確保しながら教育することの難しさ、大変さを、保育士は背負っているわけですよ・・。
今回体験してみて、実際にお給料としては手取りで30万円ほどはほしいなと率直に感じました。肉体的だけではなく、精神的にも責任も重く、かなり厳しい仕事だと感じたからです。
▲もちろん、子どもたちの成長を継続的に見守ることもあって、1日だけではとうてい理解しきれないような、”やりがい”もたくさんあることも事実でしょう。
先日、勤続年数が約7年以上の保育士の給与を月額4万円アップさせるという案がありましたが、もちろんこれだけでは足らず(たいへん前進ではありますが)、さらに財源を確保して、若手側にとっても、魅力的で続けられる仕事であってほしいと思います。未来の子どもたちのためにも。
子どもってすごくて、何がすごいって、子どもに教えられることも多いんですよね。
今回私は1日での体験でしたが、「先生こうやって豆の収穫をするんだよ」という具合に、園庭で育てている豆の収穫について教えてくれたりして。
子どもってほんとうに「十人十色」で、ご飯とお味噌汁のお汁しか食べない子もいれば、泥が手につくのが嫌で泥遊びを目の前にすると泣いてしまう子や、イヤイヤ期真っ盛りの子、おしゃべりが本当に上手な子など、本当にさまざまです。
やっぱり子どもを相手にするのは可愛いし楽しいな、と思うと同時に、そんな子たちをまとめ上げるというのは、スキルも必要だし専門性の高い仕事だと感じました。
働く親にとっても、朝の9時から17時まで子どもを預かってくれる保育士さんには、もう頭は上がらないわけで、そもそも自分が働けるのは保育園というインフラがあるからだと断言できるわけです。
その保育園が足りない、保育士も足りない、というのは何度もお伝えしてきましたが、その1つの根底にある原因は、「子どもが小さいうちは母親が育てるべき」、とか「子どもの面倒を見るのは母親の仕事」、など、そういった古い考え方が、いまだに社会の大多数の考え方としてあるからではないでしょうか。
政治家の皆さ〜ん、みてるぅ〜〜?
保育士という仕事に対して、皆さんが何か考えて感じてもらえると幸いです。
まなしばでした。
参考文献など
※1:賃金構造基本統計調査(平成27年度)ー厚生労働省
※2:保育士等に関する関係資料(2015年10月)ー厚生労働省